おおらかなサイズのダイニングにも使える椅子を作りたいと思っていた。
おおらかなので大きいということではない。ほんの少しだけゆったりとしている。その少しのことが座っていて、気持ちをゆったりさせる気がする。「何も慌てなくていいよ」と優しく言われている気になる。

TRUCKのスタッフだったコミーは前職でクレーン車を運転していた。その会社の社長にいつも言われていたこと、「約束の時間の20分前に着けるくらいに」
重量車は急ブレーキをかけても急には止まれない。だから慌ててアクセルを踏みすぎないように時間に余裕をもって行動する。この話を何年経ってもよく思い出す。いつもこの通りには出来ていないが、そうでありたい。
これまたTRUCKで働いてもらっていた椅子職人の田中さんは、いつも動きがゆったりといていた。なのに、仕事は早くてきれい。それが一番かっこいい。クロールで泳ぐのも、憧れは、ゆったり大きく動いているのにスピードは速い人。いつもそんなことに憧れている。

HAVANA CHAIRにはアームがあるのとないのと2タイプある。
どちらにも良さがあり、あれば囲まれている安心感と共に、リラックス度は高い。綺麗に削り出した特徴的なアームの形状の中、先端の下側に少しの膨らみをもたせた部分がある。座ってアームに腕を預けると自然と指先がその膨らみに触れ、それを感じる。ただそれだけのことが気持ちよく、椅子との距離が近くなった気がする。
アームのないタイプには自由な解放感がある。座面のサイズは同じなのに広く感じる。キッチンに何かを取りに行くのも軽やかに出来る。
つい、バタバタとしがちな日々の中、座る椅子が少しでも大らかさをもたらしてくれて、立ち上がった後もゆったりと過ごすきっかけになればいいなぁと思う。

W620 D580 H800 SH430 mm
フレーム／ナラ無垢材